立川談志

桂三木男独演会「祖父に挑戦」第1回

桂三木男独演会「祖父に挑戦」第1回
2009年5月7日(木)会場:内幸町ホール

桂三木男さんは二代目三木助の孫で、
三代目三木助は三木男さんの叔父さん。
今は落語協会の二ツ目なわけですが、
今日から三ヶ月に一度、内幸町ホールでの、
独演会を開催するとのことです。
その記念すべき第一回のゲストは家元(談志)で、
つづく第二回目は小朝さんがゲストとのこと。
桂三木男「お見立て」
まじめな表情で、独演会の趣旨説明というか
所信表明という感じのハナシから。
噺家になって6年になって、
このまま行けば12〜3年目で真打ちとなるわけですが、
はたして、それで良いのか
(年数だけで一人前になって良いのか)真打ちになる頃には、
それ相応の実力を付けていたいという思いから、
三ヶ月に一度の独演会を開催します、とのこと。
なんだー堅いなー、と思ったんですが、
別に人間、まじめで悪いことはないし、
ましてや内幸町ホールで家元の高座が聞けることを
我々にプレゼントしてくれているのです。
強いて言えば彼は「良いヤツ」に決まっているのです。
実にキレイで落語らしいメロディも感じられる高座。
噺のチョイスも良かったんですかね、この前に聞いたときよりも、
ずいぶんと楽しめました。
立川談志「孝行糖」
彼(三木男)の落語を聞いていて、
なんら問題ないです、とお墨付きの一言から。
最近は変なところから声の出る噺家が多くなって、
別にそれ自体を悪くは言わないけど、
芸の筋が消えた、みたいな印象があるとのこと。
先々代の三木助師匠の芸に触れて、
「饅頭怖い」で蛇が怖いと踊り入ってくる
男をめぐる描写の違いや、
「道具や」で木刀を引っ張りあう場面の演り方で、
三木助は下手にはできなかった
(悪く言えばキザ)、と実演で解説してくれました。
その了見で「芝浜」で「帆掛け船を出そう」とか、
文学を持ち込もうという発想になったのかもしれないが、
自分はナンセンスから攻めた、というハナシ。
ここで、2007年末、よみうりホールでの
「芝浜」のクライマックスを再演。
はじまると途端に大晦日の静けさが現れたようで、
ドキッっとしたんですが、
まず客の集中力がすごかった。
静けさを越えた緊張感が会場を噺のクライマックスに
連れていってしまうのでした。
しかし、今の家元ならこうするという「芝浜」で、
その緊張は一気に笑いに。
「これって落語だろう」とキャラクターが
しゃべり出してしまうんですよね。
キャラクターが勝手にしゃべり出す、と言いながら、
「孝行糖」に入ったのですが、
コレがアドリブとテンションの高さで、スゴい高座でした。
おまえの面倒みなきゃいけないってことで、
おっかさん泣いているぞ、と言われた与太郎。
「母親は、そうすることで自分を肯定していんるだ。
自分のためにやってることだ。」と言い出す。
飴を売れ、と言われ、
「なんだ、叔父さんのためにやるのか」
(と納得しかけるも)「違う、世の中のためだ」という
叔父さんの言葉に
「なんで、世の中のためにやらなきゃいけないんだ。」と反論。
「おまえは世間様に生かされてるんだろ」と諭されると、
「そんなことない、勝手に生きてんだ。」
こりゃぁスゴい。
「おっかさん心配してる。何もしてないじゃないか」と言われ、
「そんなことない、虫を観察したり、いろいろしている」
なんて、さらに反論する。
「虫を観察したり」って、、、
世間の常識ではなんら生産的でないですからね。
誰も納得してくれないわけで、
「しょうがねぇからやってやるよ」と
フテくされながらも、飴やになって町に出る与太郎なのでした。
世間との接点、常識に対して、なんら依存しない、
世間の常識では、なんら生産的でない
バカと言うよりも非常識的でバカバカしい存在です。
そんな与太郎の奔放さに共鳴したのか、
町の子どもが加勢して大騒ぎ。
殿様も巻き込んで良い余興になって
ここまでは大成功なんだけど、別の屋敷では通用しない。
怒られてボコボコにされちゃう。
最後に「状況判断ができない」弱点が理由で、
懲らしめられちゃうんですね、
やっぱりバカなのかも、、、と。
仲入り
桂三木男「宿屋の仇討ち」
元気でカワイイ江戸っ子に、不気味に堅い侍。
イハチは災難にあって、みんな同情してしまう、
そんな「宿屋の仇討ち」でした。
キレイでしっかりしていました。
そう、この噺は下手な噺家じゃ、
聞けたもんじゃないのかもな、とフト思ったのでした。
台詞も全部知ってるし、長いしね。
立川談志・桂三木男「ご挨拶」
三木男さんの高座が終わって、着替えた家元が
とろけるような笑顔で登場し、イロイロと語ってくれたのでした。
贅沢すぎる時間で、正直ハンパな「感想」なんて
書けるような内容じゃありませんので、
覚えている限りで書きたい内容だけ、
ズラっと書きますので「行きたかった・聞きたかったんだよ」って
人は読んでください。
(↓から)


一言で巧いです。
(先々代の)三木助師匠を思い出す部分がある。
仕草なんかに三木助師匠の踊りを思わせるところもある。
でも、もっとも、これはちゃんとした踊りで、
(自分は)寄席の踊りの方がオモシロくて好きなんだけど。
「落語」を感じさせる存在で居てほしい。
人気穫りに走ると(それ自体が良い悪いではないが)
ギャグをたくさん入れようとして落語がおかしくなる。
落語は本来は大笑いするような、
させるような芸能ではなくて、
ブッっと吹き出す程度のもので、聞かせる芸能。
だからギャグに走る芸人が増えると、
落語を感じられる機会が減ってしまう。
さん喬とか、小里ん、とか。
小遊三なんて落語らしさを持ってると思うけど、
やっぱり人気に走ったりする。
でも鶴瓶みたいにおもしろいのもいる。
(三木男さんのハナシに戻って)
いづれ三木助になるんだろうけど、
いろんな人と一緒にやって、人気をつけたらいい。
談春と福田和也先生のように、
(金という意味じゃなくて)力のある人を見つけたらいい。
落語の「巧さ」と、
後は「人間を磨く」というか、そういう経験をすること。
常識非常識を越えたイリュージョンがオモシロい。
たとえば(目の前の)「マイク」と(左側を指さして)「アメリカ」と
(胸の前あたりの空中を指して)「星の国」が、
なんだか分からないけどつながっている、という人間の不思議さ。
これを自分の表に出してみて、
他(者)とつながった瞬間の喜びと言ったらない。
一言で言って、俺が一番巧いでしょう。
今日の「孝行糖」だってアドリブですよ。
アドリブで、与太郎のロジカルな部分と、
落語らしいバカバカしさを一つにしている。
俺にしかできない。
君(三木男)のハナシをしないで自分の話をしちゃった。
とにかく、落語は良いです。
今は落語が一番の薬で、元気になってきた。
落語っていいよね、人が死ぬ訳じゃないし、
粋だし、洒落てて、夢がある。
医者は病気を治せない、
科学なんて螺旋階段を下るようなもの。
金玉医者は病気を治すじゃないか。
落語そのものが楽しいし、
落語が分かる喜びも良い。
落語のネタに値段を付けたらどうか、
なら「よかちょろ」は45円だ、とか。
そういうのが、スっと生活に入ってくる楽しさ、と
ソレが分かる楽しさ。分かる人間と共有できる楽しさがある。
「のめる」なんて落語は
オモシロくないからやったことなかったけど、
アレは躁鬱の噺なんじゃないかと気づいたから、
創ってみようと思ってる。
(場内からオォーっと言う歓声が)
(三木男さんに向かって)
落語をたくさんやったらいい。
落語に飽きたり、また落語って良いなと思えたり、
様々あるだろうけど。
三木助師匠は、幸せな家庭を持つ前は、
博打でさんざんな目に遭って楽屋で嫌われてた。
だから人間の残酷さ、みたいなものを
全て見て来たんだろう。ただの巧さじゃない。
「宿屋の仇討ち」の江戸っ子が
「アナタたち(源さんのことを)助太刀するでしょう?」
と言われて「しないしない」。
ここに残酷さ(のニュアンス)が現れている。
この点で他の追随を許さない。
(三木男さんに向かって)また俺が
空いていたら来るから、やったらいいよ。
聞いていたけど巧い。
このキャリアで、この年月で今は合格。
桂三木男、期待して良いと思います。


(↑まで)という感じでした。
会が終わってすぐ、新橋駅前のマクドナルドに入って、
夢中で思い出しながら原稿打ちました。

管理人の独り言
ウワサだけは聞いていた「ミンガリング・マイクの妄想レコードの世界」がいよいよ欲しくなってきました。誰も知らない60〜70年代のソウル界のスーパースター・ミンガリング・マイク。ボール紙で作られていたレコードの数々、、、気になります。
真似してホントは居ない「平成の名人」のWebサイトでもつくって遊ぼうか、とか思いましたケド、、、モシそれやったらカミロボみたいになってしまうかもなァ。

 

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